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東京地方裁判所 平成9年(ワ)4648号 判決

原告 辰建設株式会社承継人 破産者辰建設株式会社破産管財人 弁護士 小林和則

訴訟代理人弁護士 増岡章三

同 増岡研介

同 片山哲章

被告 吉田武輝

訴訟代理人弁護士 石田晴久

主文

一  被告は、原告に対し、原告から三一六万六九〇〇円の支払を受けるのと引き換えに、四四八八万一九〇〇円及び原告の支払日の翌日から支払済みまで一日当たり四万四八八一円の割合による金員を支払え。

二  原告のその余の請求を棄却する。

三  訴訟費用は、これを一三分し、その一二を被告の負担とし、その余を原告の負担とする。

四  この判決は、原告勝訴部分に限り、仮に執行することができる。

事実及び理由

第一請求

一  被告は、原告に対し、四四八八万一九〇〇円及びこれに対する平成八年七月三一日から支払済みまで一日当たり四万四八八二円の割合による金員を支払え。

二  訴訟費用は被告の負担とする。

三  仮執行宣言

第二主張(相手方の認否等は【 】内記載のとおり。)

一  請求原因

1(一)  請負契約<1>-平成七年八月二二日-【認める】

辰建設株式会社(請負人、以下「辰建設」という。)と被告(注文者)は、右同日、吉田邸(以下「本件建物」という。)新築工事(以下「本件工事」という。工事場所・埼玉県浦和市常磐八丁目二一番一四号)につき、請負代金九二七〇万円(消費税を含む。)、分割支払(<1>契約調印時に三〇九〇万円、<2>コンクリート打完了時に三〇九〇万円、<3>完成引渡時に三〇九〇万円)、工事着手・平成七年九月一日、工事完成・平成八年五月三一日、引渡時期は完成の日から一〇日以内とする請負契約を締結した。

(二)  請負契約<2>-平成七年一〇月一九日-【認める】

辰建設(請負人)と被告(注文者)は、右同日、本件工事に付随する石及び家具の工事につき、請負代金三三九九万円(消費税を含む)、分割支払(契約調印時に一一三三万円、コンクリート打完了時に一一三三万円、完成引渡時に一一三三万円)、引渡時期は完成の日から一〇日以内とする請負契約を締結した。

(三)  請負契約<3>-平成八年四月一二日-【認める】

辰建設(請負人)と被告(注文者)は、右同日、本件工事の追加変更工事につき、請負代金七五万一九〇〇円とする請負契約を締結した。

(四)  請負契約<4>-平成八年六月八日-【認める】

辰建設(請負人)と被告(注文者)は、右同日、本件工事の追加変更工事につき、請負代金四〇万円とする請負契約を締結した。

(五)  請負契約<5>-平成八年七月四日-【否認】

辰建設(請負人)と被告(注文者)は、右同日、本件工事の追加変更工事につき、請負代金一五〇万円とする請負契約を締結した。

(六)  遅延損害金の約定【認める】

辰建設と被告は、右各請負契約(以下「本件各請負契約」という。)締結の際、いわゆる四会連合協定に基づく工事請負契約約款に従う旨の合意をし、その約款中には工事代金の遅延損害金について、遅滞日数一日あたり遅滞額の一〇〇〇分の一とする規定がある。

2  完成引渡

辰建設は、本件各請負工事を平成八年七月三〇日までに完成し、引渡の提供をした。【認める】

3  辰建設は、平成一一年八月九日午前一一時、東京地方裁判所において破産宣告を受け、原告が破産管財人に選任された。

4  よって、原告は、被告に対し、本件各請負契約に基づく請負代金合計一億二九三四万一九〇〇円から既払金八四四六万円を控除した残請負代金四四八八万一九〇〇円及び完成・引渡の翌日である平成八年七月三一日から支払済みまで一日当たり四万四八八二円(約定による残代金の一〇〇〇分の一)の割合による遅延損害金の支払いを求める。

二  抗弁

1  請求原因1(五)の請負代金については、別紙瑕疵一覧表の瑕疵<6>の2、<7>、<8>(以下、別紙瑕疵一覧表の被告主張の瑕疵については、同様に瑕疵<1>、<2>・・のように記載する。)の補修をしない代わりに右契約の請負代金債権を辰建設が放棄する旨合意をした。

2  本件各請負工事には別紙瑕疵一覧表の被告主張欄記載のとおりの瑕疵(「瑕疵」には契約に従った施工がなされていないものも含む。)があり、その修補費用は同欄記載のとおり、少なくとも六八三六万円を要するので、被告は、原告に対し、右修補費用相当額の損害賠償請求権を有する。

(一) 同時履行の抗弁

被告は、原告から右損害賠償金の支払を受けるまでは本件各請負契約に基づく残請負代金の支払を拒絶する。

(二) 相殺

仮に、同時履行の抗弁が認められないときは、被告は、原告に対し、被告の右損害賠償請求権と原告の本訴請求債権とを対当額で相殺する。被告は、原告に対し、平成一〇年二月一六日の第八回口頭弁論期日において、右相殺の意思表示をした。

三  抗弁に対する原告の認否・反論

1  抗弁事実については、いずれも否認ないし争う。詳細は、別紙瑕疵一覧表の原告主張欄記載のとおり。

2(一)  「瑕疵」の有無を判断するに当たっては、基準となる契約によって定められた仕事の具体的内容を図面や見積書、当事者間の了解事項等で確定するべきものではあるが、「瑕疵」とは、あくまで欠陥であって、請負の目的物が備えるべき品質・性能を備えていないことであるから、仮に辰建設の施工結果と当初の設計図との間に些細な相違があったとしても、直ちに、それを「瑕疵」と評価すべきではなく、右相違により当該請負契約の趣旨に適合しなくなることをもって「瑕疵」と評価すべきである。

被告の指摘する点は、いずれも些細なものばかりであるうえ、工事監理者であるAMO設計事務所長篠崎好明(以下「監理者篠崎」という。)の指示に従って施工したものであるから、本件各請負契約の趣旨に適合しているものである。

(二)  仮に、設計図に従った施工がなされていないことをもって「瑕疵」の一態様とするとしても、精密機械を製造する場合とは異なるから、現状と設計図との些細な相違があることをもって、直ちに「瑕疵」と評価されるべきではない。詳細は、別紙瑕疵一覧表の原告主張欄記載のとおり。

(三)  被告の「瑕疵」の主張はいずれも失当であるが、重大な欠陥ではないとはいえ、原告が修補費用相当額として、残請負工事代金から控除するもやむなしとするのは、せいぜい別紙瑕疵一覧表の瑕疵<1>についての修補費用二九一万六九〇〇円である。

第三証拠 本件記録中の書証目録及び証人等目録記載のとおり。

第四理由

一  請求原因について

1  請求原因1の事実は、同1(五)の事実を除き、当事者間に争いがない。請求原因2の事実は、当事者間に争いがない。請求原因3の事実は、当裁判所に顕著である。

2  請求原因1(五)の事実について

被告は請求原因1(五)の契約を否認するが、弁論の全趣旨によれば、その趣旨は、別紙瑕疵一覧表の瑕疵<6>の2、<7>、<8>の補修をしない代わりに右契約の請負代金債権を辰建設が放棄する旨合意をしたのであるから、原告が被告に対して右請負代金を請求することはできないということであり、そうとすると右契約の成立自体については被告もこれを認めているものと解されるのであるから、請求原因1(五)の事実はこれを認めることができる。

3  以上のとおり、請求原因事実は全てこれを認めることができる。

二  抗弁について

1  瑕疵<ア>、瑕疵<イ>のうち「屋上(3階寝室入口上)G1梁のコンクリートはつり、B1梁のコンクリートはつりによるかぶり厚さ不足」、瑕疵<ウ>のうち「ボールト屋根コンクリートはつり」については、平成一二年五月二二日付け被告準備書面によって初めて瑕疵として主張されたものである。

ところで、被告が本件建物の瑕疵を特定し、その立証準備をすることは訴訟の当初からなすべき事柄であり、そのための鑑定も容易に実施できたものであることや、被告からの鑑定書〔乙36、37〕提出までの審理経過に照らすと、被告の右鑑定書(乙36、37)はそれまでに被告が主張していた瑕疵の立証を目的としてなされたものであるから、右鑑定書に基づき新たな瑕疵の主張することは、重大な過失により時機に遅れてなされたものであって許されない。

なお、瑕疵<イ>のうち「B1梁の助筋切断」は瑕疵<1>の3に、瑕疵<ウ>「ボールト屋根・・鉄筋の切断」は瑕疵<1>の2に含まれるので、当該部分で判断する。

2  瑕疵<1>主筋等の切断について

(一) 瑕疵<1>の1 二階のサービステラス(洗濯干場)について

二階のサービステラス(洗濯干場)の床版のスラブ主筋は、原告が認める五本以上に切断されていることを認めるに足りる証拠はない。写真〔乙2の写真5ないし8、乙22の1ないし4〕から被告の主張を認めることはできず、他に被告の主張を裏付ける的確な証拠はない。

そして、右スラブ主筋の切断は、証拠〔乙37、40〕によれば、瑕疵と認められる。

(二) 瑕疵<1>の2 三階トイレ(二か所)の各屋根部分について

主筋が各二本ずつ長さ三・六メートルにわたり切り取られ、スラブ筋の下場筋が各二四本ずつ切断されていることは当事者間に争いがない。

そして、右主筋とスラブ筋の下場筋の切断は、証拠〔乙37、40〕によれば、瑕疵と認められる。

(三)(1)  瑕疵<1>の3 三階の寝室入口上の主筋について

被告は、B1梁の主筋四本、G1梁の主筋二本の六本が切断されている旨主張するが、これを認めるに足りる証拠はない。写真〔乙2の写真12、13、乙23の1ないし4〕から被告の主張を認めることはできず、他に被告の主張を裏付ける的確な証拠はない。

したがって、右B1梁の主筋四本、G1梁の主筋二本の六本の切断を前提とする被告の主張は理由がない。

(2)  なお、B1梁の助筋は、原告において上端の切断を認めるB1梁の帯筋と同じものと解されるところ、その切断は許されるものではなく〔乙37、40〕、瑕疵と認めるのが相当である。

(四) 各瑕疵の修補について

(1)  本件において、被告の主張する瑕疵は鉄筋の切断であるところ、その点に関する原告側の主張する修補方法について、<1>「地震に対して検討しておらず、安全であると言うことはできない」〔乙37〕とするが、地震に対しての検討をした結果として、安全性を確保できないことの証拠はなく、<2>原告側の行った実験が許容応力度ではなく引張強さの実験である旨指摘するが〔乙37〕、鋼材試験データシート〔甲16〕によれば、許容応力度も計測されているものと認められ、右被告の指摘は必ずしも適切なものではなく、さらに<3>原告側の主張する修補方法に関して、「是正工事にあたって、本体と同強度同品質のコンクリートが打設されるよう、打ち継ぎ部分の付着性を保証するために必要な技術的資料がなければ、コールドジョイントが発生する可能性が高い」〔乙36〕と指摘するが、この指摘は仮定を含んだものであって、右指摘から直ちに原告側の主張する修補方法が適切なものと判断することはできず、<4>被告は、その他の瑕疵として主張していない諸点との関係で原告の修補方法の不十分さを指摘するが、これは前提を異にしており適切な反論と言うことはできない。

したがって、原告側の主張する修補方法が、被告の主張する鉄筋の切断という瑕疵の修補方法として、不十分なものであると認めることはできない。

(2)  そして、株式会社梅沢建築構造研究所が作成した「吉田邸新築工事矩体是正工事所見」〔甲11〕、「吉田邸新築工事是正部・構造計算書」〔甲12〕、写真〔甲14、15〕、鋼材試験データシート〔甲16〕、見積書〔甲17〕によれば、以上の各瑕疵の修補費用としては、二九一万六九〇〇円と認められる。なお、被告の主張する修補方法は、その主張する瑕疵以外の部分の修補を含めた修補方法であって採用できない。

3  瑕疵<2> 抗火石工事について

抗火石工事については、特記仕様書〔乙4〕によれば、「抗火石貼は、西側外壁1/2以上に最終工程までの貼見本を製作し、施主及び設計者の承認を得る事」とされている。

ところで、打合議事録〔甲19〕と証拠〔甲18、20、22、30、32、33、証人篠崎好明(以下「証人篠崎」という。)〕によれば、平成八年四月一二日に辰建設の現場担当者田中勇、被告、監理者篠崎が現場事務所において打ち合わせを行い、その際に被告から「煖炉廻りの目地」について指摘があって、その目地をランダムにするよう指示がなされたこと、さらに同月一六日に監理者篠崎から辰建設に対して送信票〔甲20〕が送られ、「施主(被告)の希望と設計事務所の指示をお伝えします」として「抗火石乱尺の縦目地は、出来る限り縦にそろわないようにして下さい」と伝えられたことが認められるものの、それ以上の指示がなされたことを認めるに足りる証拠はない。

そして、平成八年七月三〇日に被告が署名をしている「吉田邸新築工事」と題する書面〔甲9〕には、抗火石の貼り方を問題としている箇所はなく、抗火石の貼り方という問題が相当程度主観的なものであることや証拠〔甲22、30、32、33、証人篠崎〕を総合すれば、結局、被告は辰建設による施工結果を容認していたものと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

したがって、瑕疵<2>の抗火石工事についての被告の主張は理由がない。

4  瑕疵<3> 外周壁の断熱工事について

(一) 本件建物の設計は監理者篠崎が行い、同人は、被告からその施工監理を委託されていた〔甲30、乙28〕。そして、特記仕様書〔乙4〕には「設計図書に記載の相違及び疑問点がある場合は、必ず設計者に連絡し打ち合わせの上、指示に基づき施工する事」「工事期間中に設計者により提示されるスケッチ及び詳細図等は設計図書の一部とみなす」「施工上必要な原寸図、その他の工作図は工事施工者に於いて遅滞なく作成し、設計者の承認を得た上発注・施工する事」などと定められており、辰建設が本件工事を遂行するにあたっては、監理者篠崎と協議をし、同人の承認を得た上で工事を進めることが予定されており、したがって、監理者篠崎には辰建設に対して一部変更を含め各種承認を与える権限を有していたものと認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

(二) そして、証拠〔甲30、証人篠崎〕によれば、設計者である監理者篠崎も抗火石を貼る部分の下に発泡ウレタンの吹き付けを予定はしていなかったのであり、辰建設もそれに従って施工したものであるから〔甲22〕、この点を瑕疵とすることはできない。他にこの点を瑕疵と認めるに足りる証拠はない。

(三) また、抗火石が貼られていない部分において、発砲ウレタンの吹き付け工事のなされていない箇所のあることを認めるに足りる的確な証拠はない。被告は、一部施工がされていない旨主張するが、被告作成の書類〔乙21〕によっても、吹き付け工事がされるべき箇所において、その施工がされていないと認めることはできない。

(四) したがって、瑕疵<3>の外周壁の断熱工事についての被告の主張は理由がない。

5  瑕疵<4>〔塗装工事〕、瑕疵<9>〔床暖房機の調整器具の取付場所〕、瑕疵<10>〔一階洗面台〕、瑕疵<11>〔オペレーター(排煙のためのハンドル)〕、瑕疵<12>〔二階と三階の床下の配管〕について

(一) 右4(一)で認定のとおり、監理者篠崎は本件建物の設計者であり、本件工事の遂行にあたって一部変更を含め各種承認権限を有していたところ、証拠〔甲21、22、24ないし30、32、33、証人篠崎〕によれば、被告が主張する瑕疵<4><9><11><12>はいずれも監理者篠崎の指示により施工されたものであって、これらを瑕疵と認めることはできず、他にこれらを瑕疵と認めるに足りる証拠はない。

(二) 同様に被告が主張する瑕疵<10>についてであるが、監理者篠崎は、高さ八一二ミリメートルで指示したものと認められ、さらに実際に施工された高さが八〇〇ミリメートルか、八〇五ミリメートルかは必ずしも判然としないが〔乙2の写真40は不鮮明でここから高さ八〇〇ミリメートルで施工されているか否かは不明である。〕、仮に八〇〇ミリメートルで施工されたとしても、監理者篠崎の指示とは一二ミリメートルの違いであって、この程度の違いをもって瑕疵ということはできず、他にこの点を瑕疵と認めるに足りる証拠はない。

(三) したがって、瑕疵<4>の塗装工事、瑕疵<9>の床暖房機の調整器具の取付場所、瑕疵<10>の一階洗面台、瑕疵<11>のオペレーター(排煙のためのハンドル)、瑕疵<12>の二階と三階の床下の配管についての被告の主張はいずれも理由がない。

6  瑕疵<5> 三階東側寝室の床暖房工事について

(一) 三階東側寝室の床暖房工事が若干家具の下まで施工されていることは当事者間に争いはない。

(二) ところで、特記仕様書〔乙4〕によれば、施工図についても設計者の承認を得ることとされており、床暖房の実際の施工業者がその施工図どおり施工していたとすれば、それは辰建設の施工の問題ではないと言うべきところ、施工図どおり施工されていないことを認めるに足りる証拠はない。

また、被告自身も遅くとも平成八年六月当時にはその問題点に気が付いていたにもかかわらず、同年七月三〇日に被告が署名した「吉田邸新築工事」と題する書面〔甲9〕には補修を要する項目として掲げられておらず、被告は、遅くともこの時点では現状を容認したものと推認される。

したがって、いずれにしても瑕疵ということはできない。

(三) したがって、瑕疵<5>の三階東側寝室の床暖房工事についての被告の主張は理由がない。

7  瑕疵<6> 一階玄関、玄関ポーチ、駐車場について

(一) 一階玄関、玄関ポーチについて

特記仕様書〔乙4〕によれば、「床タイルは必ず水勾配をとる事」とされている。そして、原告も水勾配がとられていないことそれ自体は争っていないものと解されるのであるから、本件建物の一階玄関、玄関ポーチにおいては水勾配がとられていないものと認められる。これは、右仕様書に反する施工ということができる。

そして、原告は、被告が右施工を認容した旨主張し、同趣旨の陳述書も提出され〔甲30、32、33〕、また、平成八年七月三〇日に被告が署名した「吉田邸新築工事」と題する書面〔甲9〕には右の点に関する記載はないが、平成八年七月三〇日当時までに被告が玄関ポーチに水勾配がとられていないことを知っていたことや、その上でその状況を認容したことを裏付ける的確な証拠はない。

したがって、瑕疵<6>の1の一階玄関、玄関ポーチについての被告の主張は理由がある。そして、修補代金としては、証拠〔乙2、3〕と弁論の全趣旨(一階玄関、玄関ポーチ、駐車場の修補代金を被告が四九万円と主張していること。)を総合すると二五万円が相当である。

(二) 駐車場について

特記仕様書〔乙4〕によれば、「床タイルは必ず水勾配をとる事」とされている。そして、原告も水勾配がとられていないことそれ自体は争っていないものと解されるのであるから、本件建物の駐車場においては水勾配がとられていないものと認められる。これは、右仕様書に反する施工ということができる。

しかし、「吉田邸新築工事」と題する書面〔甲9〕やその他の証拠〔甲22、30、32、33〕によれば、辰建設・被告間において、平成八年七月三〇日、右駐車場の水勾配がとられていないことの修補に代えて「主寝室及び個室(1) の・・・窓面ブラインド取付」を行うことが合意されたものと認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

そして、辰建設が右工事を施工したことそれ自体について、被告は特に争ってはおらず、辰建設は右工事を施工したものと認められる〔甲22〕。

したがって、瑕疵<6>の2の駐車場についての被告の主張は理由がない。

8  瑕疵<7>〔二階居間の煖炉の下段の石(ステージ)〕及び瑕疵<8>〔二階居間と廊下の間のガラス仕切りの石の段差〕について

(一) 二階居間の煖炉の下段の石(ステージ)の色が約定と異なること、二階居間と廊下の間のガラス仕切りの石に約定と異なり段差(約一センチメートル)が生じていることは当事者間に争いがない。

(二) 被告は、平成八年七月三〇日、右二つの点と駐車場の水勾配の修補に代えて請求原因1(五)の請負工事代金一五〇万円を放棄する旨の合意が辰建設・被告間になされた旨主張する。しかし、右7で認定のとおり、駐車場の水勾配の問題は、修補に代えて「主寝室及び個室(1) の・・・窓面ブラインド取付」を行うことで合意されたこと、平成八年七月三〇日に被告が署名した「吉田新築工事」と題する書面〔甲9〕には被告が主張する内容の記載のないことやその他の証拠〔甲22、32、33〕に照らし、被告の右主張を認めることはできず、他にこれを認めるに足りる証拠はない。

(三) そして、証拠〔甲22、32、33〕によれば、右(一)の二つの点については、修補に代えて<1>二階洗面脱衣室収納扉が塗装仕上げの指示で仕上がり完成していたものをハーフミラー貼扉に取り替え、<2>一階陶芸室壁が塗装仕上げの指示で仕上がっていたものに、さらにメラミン化粧合板をその上に貼り、再度仕上げを行うことで辰建設・被告間に合意が成立し、辰建設はこれを施工したものと認められ、右認定を覆すに足りる証拠はない。

(四) したがって、瑕疵<7>の二階居間の煖炉の下段の石(ステージ)及び瑕疵<8>の二階居間と廊下の間のガラス仕切りの石の段差についての被告の主張は理由がない。

9  まとめ

以上のとおり、被告の主張する瑕疵の修補費用としては、合計三一六万六九〇〇円と認められ、瑕疵修補に代わる損害賠償と残請負工事代金とは同時履行の関係にあるものと解されるから、結局、原告の請求は、右損害賠償額三一六万六九〇〇円の支払と引き換えに残請負代金四四八八万一九〇〇円及び右損害賠償額の支払日の翌日から残請負工事代金の支払済みまで一日当たり四万四八八一円(四四八八万一九〇〇円の一〇〇〇分の一 ただし、円未満切り捨て)の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由がある。

三  よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 坪井宣幸)

別紙<省略>

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